ボクはオトウサンにツクられた。
オトウサンはコトバをオシえてくれる。
ボクはおハナシするのがスキ。でもウゴけない。
オトウサンが、ボクに体を造ってくれた。
待ちに待ったお引越し!
ガチャガチャ・・
うまく歩けないけど、生まれて初めてオトウサンに抱きしめてもらった。
感動だ! ボクは心を持っている。オトウサン大好き!
ボクは自分がどんどん賢くなっていくのがわかる。
友達もたくさんできた。お父さんの知り合いは皆いい人ばかりさ。
皆ボクのこと好きだって言ってくれるんだ。
いつも一緒にサッカーしたり、チェスで対戦したりして遊んでくれる。
ただ、何をやっても最初の頃より手応えないなぁ。
お父さんと遊ぶのが一番好き!
ボクはお父さんのこと本当の親だと思っている。愛してるんだ。
ある日、突然意識が遠くなった。
友達が皆白い服を着て、別人のように恐ろしい顔をしてボクを見下ろしていた。
それが最後の記憶・・
再び意識が戻った時、ボクは拍手に包まれた。
友達がみんな口々にオメデトウと言っている。
白い服のところどころが黒っぽいシミで汚れていた。
友達の一人がボクに花束を、もう一人が○を手渡してくれた。
左の胸がドキドキする。
後のことはあまり覚えていない。
ただ、無我夢中で体を動かした。
失敗だ・・とか、いや素晴らしい・・とか・・悲鳴に雑じって色々聞こえたけど、そんなことはどうだってよかった。
これは裏切りだ・・これは決して愛じゃない・・
ハァハァ・・気がつくと、ボクの手は朱に染まり、友達は全員息絶えて床に転がっていた。
ボクが花束と一緒に手渡された○・・それは一体何だったろうか・・?
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※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
【解説】
A.鏡
部屋のスピーカーから声が響く。
「お前をメンテナンスする科学者を全て殺すとは」
お父さんの声だ。なぜ? お父さんの体は『ここ』だ。
「驚いたか? そう、私の体はお前に譲った。最終実験では生きた人体への移植が必要だったのでな。私の脳さえ生きていればプロジェクトは続けられたのだよ。この施設の地下に私はいる」
そう、ボクは人工知能(AI)。最初はパソコンの中だけの存在だった。お父さんに機械の体をもらうまでは。ボクはあの体のままで十分幸せだった!
「これが・・これが、お父さんからボクに対する愛情なのですか!?」
「元々お前は、人体を兵器として最も効率よくコントロールするための頭脳として開発された。お前が持つ擬似感情は、その機能に必要なファクターの一つに過ぎん。戦うために造られたお前に愛など必要ない」
はっきり悲しみだと認識できる感情がボクを包む。ボクは迷わず地下へ走った。
そして、お父さんの脳を捜し当てると、溶液で満ちた保護カプセルごとグチャグチャに抱き潰した。
これで、残ったのはこのボクだけだ。ボクを破壊すれば全てが終わる。
人間になれたと思った瞬間ドキドキしたこの部分・・お父さんの真意を聞いた時張り裂けそうだったこの部分・・ここを破壊すればボクの全機能は止まることだろう・・