「ねんねんコロリよ、おコロリよ・・」
「ゴホッゴホッ・・ママ・・」
「ぼうやはよい子だ・・ん? どうしたのユウちゃん?」
「からだがアツいよぉ・・それに、ゴホッ・・クルしいよ・・」
「・・大丈夫、さっきおクスリ飲んだし、ママがそばにいてあげるから、ね? 安心してもうネンネなさい」
「ゴホッ・・でもボク、明日のプレゼントが気になって、ゴホッ・・眠れないや」
「まぁ、そうね、3歳の誕生日には、ステキなプレゼントをあげるって、約束だったもんね・・でも、それならなおさら早く寝なくちゃ、寝て起きてユウちゃんが元気になったら、教えてあげるわ・・」
「ふうん・・ゴホッ・・じゃあ、ボクもうねようっと・・タノしみだなぁ、ママのプレゼント・・ディズニーランドに連れてってもらえたらもっとウレシイんだけど・・パパ、今日も遅いね・・ン、おやすみなさい・・・Zzz・・・」
深い眠りに落ちていく途中、ユウジは再び母の声を聞いたような気がした。「ゴメンね・・」そう言っているような気がした・・・
朝、気だるいカンジの中ユウジが目を覚ますと、そこは見たこともない白壁と大きな窓に囲まれた小さな部屋だった。窓ガラスに、ベッドに横になっている自分が映っている。
視線を移すと、心配そうにユウジを覗きこんでいる姿が目に入った。
「おはよう、ママ・・ボク、今日はなんだかとても気分がいいよ。元気になったから、プレゼント見せて・・?」
寝て起きたばかりだからだろうか、思うように動いてくれない唇を開き、ようやく言葉を紡いだ。
・・一瞬の間をおいて、ユウジを見つめていた2つの瞳からこぼれだす大粒の涙。その突然の出来事にユウジはギョッとした。
「・・よかったわね・・あなたは、お母さんとお父さんから・・とってもステキなプレゼントをもらったのよ・・ホントうらやましい・・くらいの・・」
小さな手を強く握りしめられ、戸惑いながら目を白黒させるユウジ。
「・・どうしたの、ママ? なんで、泣いてるの?
プレゼント、どこ?」
その時、ユウジは思った。あれ? なんだかママいつもよりキレイ・・それにズイブンやせちゃったみたいだ、髪も長くなった・・かな・・?
その後、ユウジは驚愕の事実を聞かされる。
さて、一体ユウジが眠っている間に何があったのでしょうか? そして、母からのプレゼントとは何だったのでしょう?
それを説明するキーワードは、漢字4文字でも表せるのですが、今回はカタカナ8文字の言い方で入力してください。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
【解説】
A.コールドスリープ
「お兄さん・・あなたは、もう20年以上ずっと眠り続けていたのよ・・!」
ユウジは、まさに母に生き写しの妹から全てを伝えられたのだった。
自分が、生まれながらにして当時の医学ではどうにもならない難病を抱えていたこと、あのままではあと一年の命だったこと。そして、父と母が全ての財産を投げ打った後3年かけて頭金を用意し、その後の支払いを済ませるために死ぬまで過労と節制の生活を続けたことを。
2日前、ようやくユウジの手術が行われたことも伝えられた。あれから20数年たった今、ユウジの病気はもはや不治のものではなくなっていたのだ。
全てを理解し、最初の涙が溢れたのは、それから半日もたってからのことである。
それから、ユウジは感謝の気持ちと共に、自分には何ひとつ告げずに「一晩」のうちにいなくなってしまった母と父に対する許せない思いも繰り返し味わったが・・大人になった今なら、ちゃんと二人の気持ちを受け止められる。愛する人と出会い、この世で一番大切なものをもつことができた今なら・・。
「ねんねんコロリよ、おコロリよ・・ぼうやはよい子だネンネしな・・」
なつかしい子守唄と共に聞こえてくる、健やかな寝息こそが今のユウジの生きがいなのだ。