とある人気作家の烏有氏が自宅の執筆室で刺殺された。金庫が開けられており、金銭目当ての犯行と思われる。
いつも華麗なトリックで読者を煙に巻くという烏有氏。鍵は部屋の中に一つ。
流石と言っていいのか、現場は完全な密室であった。
捜査は行き詰まり、ついに探偵君が駆り出されることとなった。
刑事「さあ、伊賀君。この密室の謎を解いてくれ」
四方の壁に囲まれた部屋の北側には書棚、南側には窓と机、
東側にはCDプレーヤーが置かれ、中央で烏有氏は倒れていた。床には書類や道具と思われるものが散らばっており、歩く通路さえない。だが、やはり作家であるからなのか。境界線があるかのごとく書棚の周りは綺麗だ。
編集者「先生は仕事に熱中するタイプでしたからね」
伊賀「ん!これは何です?」
烏有氏の手には一枚の用紙がクシャクシャになり握られていた。
刑事「不自然な点もありませんし、おそらく、被害者がこときれる寸前に犯人の目を盗み掴んだんでしょう」
伊賀「つまり...ダイイングメッセージというわけですか」
用紙にはNo.3という題と文章が印刷されていた。近くにはNo.1からNo.10までの用紙が積まれてあったのでそこから抜き出したのだろう。
刑事「この書類は被害者自身が小説を練り上げる時のコツやアイデアが書かれたものだそうだ。No.3の紙の内容を調べたが事件内容とはどれも関係しないものだった」
伊賀「ふーん」
書棚から一冊本を抜き取る。違和感を覚える程、真っ赤な本だ。読むわけでもなくパラパラとページをめくってみる。
伊賀(密室...散らかった部屋...No.3と書かれた用紙...そうか!)
編集者「一体烏有先生は誰にどうやって殺されたんですか!」
伊賀「密室の謎は解けました。犯人もいずれ分かるでしょう。」
問)どうやって密室を作り出したのでしょう
キーワードとなる言葉を ○○の□□ という形で
二字ずつ文中から抜き出してお答えください。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
【解説】
A.書棚の通路
刑事「解けたんですか?!一体どうやって密室を作り上げたというのです!」
伊賀「ノックスの十戒、お知りですか?」
刑事「は?」
編集者「作家ロナルド・ノックスが1928年に発表した、いわゆる推理小説を書く上でのルールですね。」
伊賀「そのとおり。第一、犯人は物語の当初に登場していなければならない。といった具合ですね」
刑事「それが何か?」
伊賀「おそらく、ダイイングメッセージのNo.3はNoがノックス。3は十戒の三つ目を表しているのでしょう」
刑事「三つ目とは?」
伊賀「犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない」
刑事「通路?!そんなものが?!」
伊賀「はい。この部屋には秘密の抜け穴があったのです。妙にスッキリした書棚の周り。怪しげな真っ赤な本」
伊賀「おそらく!これをこうすれば!」
真っ赤な本を書棚に強く押し込む。
ガタン!!!
刑事「そんな...」
伊賀「これがすべての真実です」
ありがとうございました。
犯人は秘密を知った被害者の友人でした。
烏有氏は仕掛けが使われると予想し、ダイイングメッセージを遺したのでした。
最後まで規則違反でごめんなさい。